学会紹介
アジア政経学会(Japan Association for Asian Studies:JAAS)は、アジアに関する地域研究を促進し、その成果の普及を図ることを目的とする研究者組織です。会員の研究対象は、東アジア、東南アジア、南アジア、あるいは広域アジアにわたり、政治、経済を中心に、法、歴史、社会、国際関係などの社会科学の諸分野におよびます。会員数は1990年代半ばに1000名を超え、アジア研究では日本最大の学会となっています。
本学会は、1953年(昭和28年)5月5日に創設されました。アジア関連では、戦後もっとも早く設立された学会のひとつです。この日、東京大学に隣接する本郷・学士会館に約50名が参集して設立発起人会を開き、6月13日に学会「設立趣意書」を決定し、6月27~28日に慶應義塾大学で第1回大会を開催しました。以来、毎年欠かさず年2~3回の研究大会を開催しています。学会創設の翌1954年、学会誌『アジア研究』を季刊で創刊しました。その創刊号から最新号まで、現在すべてJ-STAGEで公開されています。1994年に会員向け『ニューズレター』の発行を開始し、2002年に若手会員を対象とした学会賞「アジア政経学会優秀論文賞」を設けて翌年から毎年表彰を行っています。2010年からは若手会員の研究レベルアップを目的として定例研究会を年3回ほど開催しています。2020年から新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大しましたが、本学会では書面開催やオンライン化に切り替えて研究大会と定例研究会を滞りなく開催しました。
本学会はまた、1989年の第1回国際シンポジウムを皮切りに、海外の研究者を研究大会に招聘したり、海外学術団体、たとえば、アジア社会科学研究協議会連盟、韓国アジア研究学会、アメリカ・アジア学会、ドイツ・アジア学会、アジア経済コミュニティ・フォーラム、台湾東南アジア学会などと連携したりするなどして、国内外のアジア研究者の交流をはかってきました。2016年からは樫山奨学財団の助成を受け、樫山セミナー・国際シンポジウムを定期的に開催しています。学会の刊行物としては、1964年から刊行が始まった「現代中国研究叢書」シリーズ(アジア政経学会、2001年まで全39巻)、学会創立40周年の記念企画である「講座現代アジア」全4巻(東京大学出版会、1994年)、2008年に刊行された「現代アジア研究」全3巻(慶應義塾大学出版会)があり、その時々の日本におけるアジア研究の水準を示しています。
学会組織の形態としては、本学会は創設から数年を経た1957年に財団法人として登記され、公益法人改革に沿って2013年4月1日に一般財団法人に改組されました。改組前から、2年に1度の会員投票の結果にもとづいて学会役員が改選されており、改組後もこの民主的な慣行が踏襲されました。改組後の「定款」では、会員以外のメンバーを含む評議員選定委員会が新たに設けられ、この委員会が会員投票結果を参考に評議員を選定し、評議員会が会員投票結果を参考に理事・監事を選定する仕組みが定められています。理事会(理事・監事)が実務機関として学会の運営をおこない、評議員会が理事会を監督する役割を果たしています。
学会創設以来増加してきた会員数は、2000年代末に約1300名に達し、近年では千百余名で推移しています。長年にわたる先達たちによる積み重ねを土台に、アジア政経学会は、アジアに関わる諸問題に取り組む研究者にとっての包摂的な地域研究プラットフォームとして、アジア研究のさらなる発展を目指して活動を続けています。
アジア政経学会沿革
06月13日 アジア政経学会「設立趣意書」を決定
06月27-28日 第1回大会を慶應義塾大学にて開催、第1回理事会・評議員会・会員総会を開催、初代理事長に植田捷雄(東京大学)が就任
「講座現代アジア」全4巻を出版
学会創設以来続いてきた外務省による補助金支給が終了
学会設立趣意書(1953年)
趣意書
独り中国のみならず、広く韓国、インドその他南方諸地域におけるアジア問題の解明が、日本にとって極めて重要であることは何人にも疑えぬ常識である。それにも拘わらず、これまでの日本人は、たとえその歴史的、古典的研究に成果を上げるものはあっても、現に生起しつつあるアジアの政治。経済問題に正面から取り組み、これを理論的、実証的に研究しようとする努力は、動もすれば忘れられ勝ちであった。
これに鑑み、われわれは学者と実際家との綜合的協力により、日本の学会におけるこの大きな欠陥を補い、似て学問の進展に寄与するとともに刻下緊急の実際的要請に応えようとするものである。有志相集まり、ここに「アジア政経学会」を設立し、所期の目的に邁進しようとする所似である。